主に消化管に関する診療
消化器内科は消化管と消化管の働きをサポ―トする肝臓、膵臓、胆のうで起きたとされる異常や病気について診察、検査、治療を行う診療科です。なお消化管とは、口から肛門までつながっている一本の管のことで、その中には、食道、胃、小腸、大腸などの器官があります。
当診療科は主に消化器症状を訴える患者さまを対象としています。具体的には、以下のような症状のある患者さまが数多く受診されます。
- 腹痛
- 胃の痛み
- 胃もたれ
- 胸痛
- 胸やけ
- 酸っぱい物が込み上げる(呑酸)
- 嘔吐・吐き気
- 食欲不振
- 腹部膨満感
- 下痢
- 便秘
- 下血
- 血便 など
AI画像診断支援システム搭載の内視鏡
症状が長引くようであれば、消化管が何らかの病気に罹患していることも考えられます。
なお内視鏡については胃カメラ(上部消化管内視鏡)、大腸カメラ(下部消化管内視鏡)ともに検査可能で、当院ではAI画像診断支援システムが搭載された内視鏡を使用しております。
胃カメラ
一般的には胃カメラと呼ばれますが、正式には上部消化管内視鏡と言います。主に食道、胃、十二指腸の内部を観察するための検査機器となります。胃カメラに限ったことではありませんが、内視鏡はビデオスコープとビデオシステム本体(モニター、光源装置、プロセッサー 等)に大きく分けられます。スコープ側に体の内部を観察するための器具や検査時にハンドリングする操作部が揃っています。細長いスコープの先端部分にはCCD(超小型カメラ)、照明、レンズ、採取物をつかむための鉗子、送気・送水ノズルなどが搭載されています。
検査時は食道、胃、十二指腸などで、炎症、潰瘍、ポリープの有無などを調べていきます。がん等が疑われる組織が見つかれば、一部を採取して顕微鏡で調べる検査も行います(生検)。また胃がんは初期症状が出にくく、この状態で見つかるのは胃カメラを行ったケースが大半です。しかも早期に発見でき、速やかに治療を行うことができれば予後は良好です。ちなみに胃がんは40歳半ば~後半にかけて患者さまが増加します。このことから、40歳を過ぎた方は定期的に胃カメラを受けられることをお勧めします。
胃カメラによる検査をした方がよいとされる方
- 健診等の胃部X線バリウム検査の結果から要精密検査となった方
- 喉のつかえが気になっている
- 胃に不快さを感じている
- 吐き気や胸やけの症状がある
- ピロリ菌に感染している疑いがある
- 家族で胃がんに罹患した方がいる
- 黒色の便がみられる
- 40歳を過ぎても胃がんの検査を一度も受けたことがない方 など
胃カメラで発見されやすい病気
- 胃がん
- 食道がん
- 胃・十二指腸潰瘍
- 逆流性食道炎
- 胃炎
- 食道・胃・十二指腸ポリープ
- 食道裂孔ヘルニア など
経口内視鏡と経鼻内視鏡
胃カメラにはスコープを口から挿入するタイプの経口内視鏡と鼻から挿入するタイプの経鼻内視鏡があります。当院ではどちらのタイプにも対応しています。
経口内視鏡は、従来からあるタイプの内視鏡で、直径1cm程度のスコープを口から挿入していきます。嘔吐反射は起こしやすいですが、経鼻内視鏡と比較して詳細な観察が可能で、病変を発見しやすいといったメリットがあります。
一方の経鼻内視鏡は左右どちらか通りが良いとされる鼻孔から内視鏡を挿入していきます。したがってスコープの径は約5~6㎜と細い仕様になっています。スコープが舌の付け根に触れることがないので嘔吐反射は出にくいです。このことから鎮静剤を使用しないで検査に臨むケースが大半です。また、検査中は口呼吸となりますが、検査時に医師と話すことができます。観察中でも気になることがあればお気軽にご質問ください。なお経鼻内視鏡を希望されたとしても鼻孔が元々狭い、鼻に病変のある方(アレルギー性鼻炎、鼻ポリープがある、鼻中隔湾曲症の方 等)、鼻出血しやすい方につきましては経口内視鏡での検査をお願いしています。
胃カメラによる検査の流れ
同検査を受ける際の大まかな流れについては以下の通りです。
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胃カメラの予約をする
検査を希望される方は、事前にご連絡ください。胃カメラを受ける1週間ほど前に一度受診いただきます。当院で初めて検査を受けられる方は感染症の検査を行います。診察の結果、医師が問題ないと判断すれば、胃カメラの日時を予約するほか、経口と経鼻、どちらで受けるかの選択もしていきます。
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検査前日
夕食に関しては、遅くとも21時までには済ませてください。食事については検査が終了するまで絶食になります。飲み物に関しては、水やお茶の制限はありませんが、糖分の入ったジュースやコーヒー、牛乳などは控えます。
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検査当日
絶食は検査が終わるまで続けます。水を飲むことについての制限はありません。
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来院後
問診時に体調等を確認し、検査に問題がなければ前処置を行います。まず検査時に観察しやすくするため、消泡剤を服用し、胃内の泡を除去します。その後、局所麻酔をしていきます。
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検査開始
検査をするにあたって、左側を下にして検査台に横になります。その状態で、鼻および口から内視鏡を挿入し、食道、胃、十二指腸等の内部を観察します。経鼻内視鏡であれば質問がある、異常に気づいたという場合は医師との会話が可能です。検査時間は観察のみであれば5~10分程度です。
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検査終了
検査を終えてもしばらく院内でお休みいただきます(30~60分程度)。その後、ご帰宅となりますが、食事については麻酔の効き目が切れるとされる検査が終了してから1時間後以降にします。
胃カメラ検査後の注意点
- 経鼻内視鏡の検査をした方は、鼻を強くかまないでください
- 一部組織を採取した場合(生検)、食事は検査終了後2時間以上空けてください
- 検査時は内視鏡挿入の影響で胃内に空気が入るようになります。これがお腹の張りを訴える原因となりますが、時間を経ることで治まるようになります
大腸カメラ
正式には大腸内視鏡もしくは下部消化管内視鏡と呼ばれます。この検査機器を用いることで、直腸や結腸だけでなく、盲腸の内部まで検査が可能で、小腸の一部もその範囲に含まれます。肛門から挿入していくもので、スコープの径の太さは11~13㎜程度あります。大腸内部の病変(炎症、潰瘍、ポリープ、悪性腫瘍 等)の有無を観察していきます。検査時にがん等の病変が疑われるのであれば、内視鏡で一部を採取し、顕微鏡を用いての検査(生検)も可能です。またポリープを発見し、除去できると判断した場合は内視鏡で切除することもできます。
また同検査は大腸がんの発症の有無でも役立ちます。ちなみに大腸がんは、日本人女性のがんによる死亡者数の第1位で、男性では第2位となっています。なお大腸がんは早期の段階で自覚症状が現れにくいです。多くは、健診での便潜血検査、血便等で気づくようになります。40歳を過ぎた頃から発症率が上がるようになるほか、各自治体で行われている大腸がん検診も40歳以上を対象としています。早期に発見することができれば、予後は良いとされているので、40歳を過ぎたら定期的に大腸カメラを受けられることをお勧めします。
大腸カメラによる検査をした方がよいとされる方
- 便潜血検査の結果が「陽性」
- 血便が確認された
- 下痢や便秘がよく起きる
- 急激に体重が減少した
- 腹痛やお腹の張りを訴えている
- 貧血の症状がみられる
- 大腸がんや大腸ポリープを治療した経験がある など
大腸カメラで発見されやすい病気
- 大腸がん
- 大腸ポリープ
- 大腸憩室
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
- 大腸粘膜下腫瘍
- 感染性腸炎 など
苦痛はできるだけ低減します
先にも述べましたが、検査時は肛門から逆流する形で内視鏡を挿入していきます。大腸は曲がりくねった構造をしています。このことから、腸を伸ばして内視鏡を挿入していきますが、その際に空気も腸内に入ることになります。これがお腹の張りや腹痛の症状を訴える原因にもなるわけですが、当院は内視鏡挿入時に空気ではなく、腸管に吸収しやすいとされる炭酸ガスを使用していきます。これによって腸内に空気が残りにくい状態になるので、腹痛やお腹の張り、腹部の違和感などの症状は空気が入る際と比較すると和らぐようになります。このように当院では患者さまの負担をできるだけ軽減する環境にも努めております。
大腸カメラによる検査の流れ
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大腸カメラの予約をする
同検査を希望される場合、事前に外来を受診ください。診察の結果、大腸カメラの受診が可能となれば、日時を予約します。なお検査をするにあたって感染症の有無を調べる血液検査をすることがあります。また常用薬のある方は診察時に医師に伝えます(種類によっては休薬の必要があります)。服用している薬がわからない場合はお薬手帳をご持参ください。このほか、日時を予約された方は、医師もしくは看護師に検査を受けるにあたっての注意点等の説明があります。
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検査前日
消化の良い食べ物を選んで食べるようにします。前日の夕食は、おかゆ、素うどん、具のない味噌汁など簡単なものにします。当院では検査食(有料)をご用意することもできますので、何を食べればよいかわからない場合はお気軽にご相談ください。なお夕食に関しては遅くても21時までには済ませてください。なお水分につきましては水やお茶であれば制限されることはありません。このほか、夕食を終えてから眠りにつくまでの間に下剤を服用していくこともあります。
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検査当日(起床~来院)
常用薬に関しては医師から制限を受けているものでなければ服用できます。検査が終わるまで絶食しなくてはなりませんが、水分(お茶や水)は無制限です。来院された後ですが、検査時は腸内を空っぽにする必要があるので下剤(腸内洗浄液)を服用します。その後は何度もトイレを往復することになりますが、便の色が透明になれば腸内に何もない状態ですので、検査が受けられるようになります。検査当日はご自身の運転(車、バイク、自転車 等)による来院は控えてください。
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検査時
アクセサリー等の貴金属類は全て外し、検査着に着替えます。肛門から内視鏡を挿入していきます。直腸や結腸といった大腸内腔を観察し、病変の有無等を観察していきます。なおがんなどが疑われる組織があれば一部を採取し、顕微鏡で詳細を確認することもあります(生検)。なお観察のみであれば検査時間は15分程度です(個人差はあります)。
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検査終了
結果については後日来院して医師から説明を受けてください。その後、医師あるいは看護師から検査後の注意点の説明を受けた後にご帰宅となります。
大腸カメラ検査後の注意点
- 食事は、検査終了後1時間ほど経過してからにしてください(観察のみの場合)
- お腹が張っていくので、オナラは我慢せずに積極的に出してください
- 生検やポリープ切除をした場合、当日の激しい運動は避けます。またお風呂に関しては、シャワーを浴びるのみにしてください(当日のみ)。刺激の強い食べ物や飲酒は、2~3日程度は控えます。
- 排便の際、血が少し混じった便が出ることがあります。