睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠の最中に呼吸が停止、あるいは低呼吸状態にあると判定されると睡眠時無呼吸症候群(SAS: sleep apnea syndrome)と診断されます。その定義に関しては10秒以上の呼吸停止と低呼吸状態(換気量が通常の50%以下)が睡眠中1時間当たりで5回以上(7時間の睡眠で30回以上)あった場合としています。
発症の原因は大きく2つあるとしています。ひとつは何らかの原因によって気道(空気の通り道)が閉塞してしまうことで起きる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)です。この場合、肥満による脂肪が首回りについている、舌や扁桃、口蓋垂の巨大化、先天的に顎が小さいなどが挙げられます。また気道の閉塞がなくても、呼吸中枢が障害を受け、それによって睡眠中に呼吸の指令が出なくなることで無呼吸状態になることもあります。これを中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)と言います。主に心不全の患者さまに起きやすいとされています。ちなみに日本人の全SAS患者さまの大半は閉塞性睡眠時無呼吸症候群が原因としています。
主な症状ですが、呼吸停止や低呼吸以外ではいびき(気道が閉塞されるOSASのみ)、起床時の頭痛、日中の活動時に強い眠気に襲われる、集中力の低下、睡眠途中で目が覚めるとなかなか寝つけない(中途覚醒)、疲労感(疲れがとれない)などがあります。同居する家族などからいびきがうるさいとの指摘を受けた、上記の症状に心当たりがあるという場合は一度受診ください。
検査について
問診や診察の結果、医師が診断をつけるための検査が必要と判断すれば簡易睡眠検査が行われます。同検査は睡眠中の呼吸の状態を確認するほか、SpO2を測定するなどします。その結果からさらなる詳細な検査が必要となった場合は検査機関に一泊入院してのポリソムノグラフィ(PSG)が行われます。これは、睡眠時の呼吸状態やSpO2の測定だけでなく、脳波、心電図、筋電図なども測定します。これによって発症の有無のほか、重症度も判定することができるようになります。
治療について
検査の結果、発症が確認された場合は治療が必要となります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さまではまずは生活習慣の見直しから行っていきます。具体的には肥満が原因であればダイエットをします。仰向けに寝ることが多い場合は無呼吸になりにくい横向きの寝方に変えます。このほか飲酒や喫煙を控え、睡眠薬を服用している方は使用を止めるなどしていきます。
睡眠時無呼吸症候群の症状が軽度であれば、睡眠時無呼吸症候群専用の枕、もしくはマウスピースを使用していきます。
手術療法ですが、扁桃肥大であれば扁桃を摘出することがあります。また狭窄化した気道を広げる手術として、口蓋垂(のどちんこ)、口蓋扁桃、軟口蓋の一部を切除する口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)が選択されることもあります。
なおOSASの患者さまで最も多いとされる治療法がCPAP療法です。ある程度重症とされるケースで用いられるもので、圧の加わった空気を送る装置を使用します。睡眠時は同機から鼻マスクを通じて気道へと圧のある空気を送り込んでいきます。これによって閉塞状態は解消され、鼻呼吸での睡眠が可能となるので、いびきも出なくなります。CPAPによる治療期間中は一定の間隔を空けて通院し(1ヵ月に1回程度)、使い心地などを医師に報告していきます。